斉と公平太「Big history & Days」
斉と公平太は美術をひとつの問いとして引き受けながら、独自のリサーチに基づく実証的な設問と冗談めいた解答を繰り返すように、絵画、立体、インスタレーション、執筆、デザインなど、多様な表現手法において制作活動を展開しています。白黒の模様が回転すると色がついて見える現象を利用したベンハムの独楽という玩具をもとに、直径4メートルの独楽を制作して回転させた作品『グスタフ・フェヒナーもしくはベンハムの独楽』(2018年)や、ジェフ・クーンズにも引用された古典的図像であるオオウチ錯視の作者である正体不明の日本人について調査を進め、遂に本人を発見する顛末をつづった『オオウチ錯視の作者を探す旅』(2014年)など、視覚現象をもとにした美術作品と商品その他の様々な流通形態を対置することで、価値を生みだす制度の在り方に思考をめぐらせるプロジェクトなどを行ってきました。
また一方で、あいちトリエンナーレ地域展開事業として開催された「岡崎アート&ジャズ2012」に『オカザえもん』を出品し、予期せず愛知県岡崎市のご当地キャラクターとして全国的に知れ渡り注目を集めたほか、中日新聞ウェブでの「芸術は漠然だ!~斉と公平太のムダに考えすぎ~」のコラム連載など、美術家としての活動領域は多岐にわたります。軽妙でばかばかしくもある諧謔やユーモアがにじみ出る特徴的なニュアンスによって、斉との多面的な作品展開はアイロニーや制度批判を含むものとして見ることができますが、そのアプローチは一貫して作家自身が決して手放そうとしない問い、美術とは何かという漠とした穴ぼこの中心に向けられています。これまで「あいちトリエンナーレ2010」に参加、アートラボあいちや市民ギャラリー矢田など愛知を中心に展示を行なっており、東京での個展は23年振りとなります。
本展では、人類史や美術史といった大きな時間の流れ(Big Hisotory)と、一人の個人が体感できる日々の時間(Days)の接続をテーマとしています。50万年前の貝殻に人が刻んだ模様や、7万3千年前の石の薄片につけられたパターンを模した絵画、画像生成ソフトによって制作された女性の肖像画などとともに、本展に向けて時間について考えるために、2023年1月に名古屋から東京までを斉と公平太が徒歩で移動したことから生まれる作品によって構成されます。これまで人類最古の美術と考えられてきた洞窟壁画などよりさらに年代をさかのぼる造形物が新たな研究や発掘によって明らかにされ、また同時に人工知能の発展によりイメージの蓄積から新たなイメージを瞬時に生成する技術が登場したことで、美術史の起源や射程もその都度更新を迫られています。こうした歴史として定式化される時間の流れと、一人の個人が経験可能な時間はどのように結節し、展示という視覚形式において現れるのか。どうぞご期待ください。
斉と公平太 Koheita Saito
1972年愛知県生まれ。1995年名古屋造形芸術大学 (現・名古屋造形大学) 卒業。
近年の主な展覧会に、「2021年度第3期コレクション展」愛知県美術館 (2022/愛知)、「断続・プロット・生活」See Saw gallery+hibit (2021/愛知)、「非零和無限不確定不完全情報ゲームとしてのアート?」TALION GALLERY (2019/東京)、「3331アートフェア 2019」アーツ千代田 3331 (2019/東京)、「グスタフフェヒナーもしくはベンハムの独楽」アートラボあいち (2018/愛知)、「TARO賞 20年 / 20人の鬼子たち」岡本太郎記念館 (2017/東京)など。
- 会 場
- タリオンギャラリー > HP
- 住 所
- 豊島区目白2-2-1 B1F
- 電 話
- 03-5927-9858
- OPEN
- 11:00-19:00 月火祝休廊